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エルルゥ日記〜今日のハクオロさん〜










「ハクオロさん? ハクオロさーん?」



城の中を捜しても、ハクオロさんの姿は見当たらない。普段ならお仕事をしている時間だけど、ベナウィさんが言うにはもう今日の分は終わってしまったらしい。



「もう……。何処に行ったんですか……」



最近ハクオロさんは忙しくてあんまり私達に構ってくれません。

いつも、お仕事が忙しいから仕方ないんですけど。



「でも、その割にトウカさんやカルラさんとはよく会ってるんですよね……!」



うふふふふふふふふ……!

別に、怒ってるわけじゃないですよ?

でも、力ちゃんハクオロさんはどうして毎回私と二人きりでも他の人の名を出すんですかねぇ!

最近は、折角二人きりで邪魔者がいないのにベナウィさんを呼びたがるし。

二人きりで十分です。邪魔者は不要です。



「全く……。そろそろ虫除け対策をしたほうがいいのかしら」




ご飯に混ぜれば手っ取り早いですし。



「……って、そんなことより、ハクオロさんを捜さないと」



特に用事があるわけじゃないですけど、やっぱり一緒にいたいですもん、家族だから。……本当、『家族』って便利な言葉ですよね。

自然と口元が弛む。と、私の着物が何かに引っ張られた。



「おねーちゃん」



「ア、アルルゥ……。どうしたの?」



私の顔をじっと見つめる。覗き込むような視線に、少し仰け反ってしまう。



「……変な顔」



「なっ……! ア、アルルゥ!誰が変な顔なのよっ!」

自覚していただけにショックが大きい。……そこまで変な顔だったのかしら。



「エルンガー」



ぼそり、といったそれを聞き逃すはずが無かった。



「―――こ、こらーっ! 待ちなさい、アルルゥ!」



脱兎の如く逃げ出すアルルゥ。そう簡単に逃がすわけにはいかない。私は全力でアルルゥの後を追った。








「―――何をしているんだ、エルルゥ?」



「え? ハ、ハクオロさん!?」



アルルゥを追い掛けて外まで来たけれど、訓練場の裏手で見失ってしまった。

相変わらずすばしっこいんだから……。

声を掛けられたのは、アルルゥの追跡を諦めた帰り道。普段なら気にも止めないような道の隅だった。



「どうしたんだ? そんなに息を切らせて」



「い、いえ……。アルルゥがこっちに来なかったですか?」



期待していなかった返答だったけれど、あぁ、と知っているそぶり。

そのままハクオロさんは傍らの木陰を指差す。



「何だか慌てた様子で走ってきて、そこで寝ていたムックルに飛び乗って何処かに去っていったが」



それではさすがに追い付けない。仕方がない、今晩の夕食で反省してもらおう。



「ところで―――ハクオロさんは何をしていたんですか?」



その手に持っているのは、じょうろ。―――どうしてじょうろなんて持ってるのかしら?

ハクオロさんは嬉しそうに、それも今まで見たどの顔よりも充実に瞳を輝かせている。

よくぞ聞いてくれました、と言った表情だ。



「あぁ、―――見てくれ、エルルゥ」



「……何ですか、それ?」



「これはな、エルルゥ。酢橘だ」



「……酢橘(すだち)、ですか」



「私が丹精込めて育てたんだよ」



喜色満面、生まれたての我が子を見る目で酢橘を眺める。

二十個程の小振りな実が成っている。



「しっかり育てばエルルゥにも分けてあげよう」



「い、いりませんよ、そんなもの!!」



私は酢橘はあまり好きじゃないですし……。

そうか、と傷ついた表情で俯くハクオロさん。

……か、かわいい!



「あ、や、やっぱり貰います!」



「いや、そんなに無理しなくてもいいよ」



「いえ! それよりも酢橘の話、もっとじっくり聞かせて下さい! ね、そうしましょう! ハクオロさんのお部屋で!」



うふふふふふふふふふふ。これで邪魔者抜きで二人きりっ!



「あ、あの、ちょっとエルルゥさん?」



問答無用でハクオロさんの着物の襟を鷲掴む。

その後。私はとっても充実した一日を過ごしました。





終われ。