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うたわれるものSS
「求愛」
その日もベナウィは悩んでいた。
彼の悩みの種は、トゥスクルの皇であるハクオロの事だ。皇として必要な素質を全て兼ね備えているハクオロだが、何故か正室を決めようとしないのだ。このままではトゥスクルは跡取りが出来ない。ベナウィはそれが心配だった。
そしてもう一つ厄介なのが、ハクオロは……政務中に逃走するのだ。しかも、その逃走手段は実に豊富で、最近はベナウィが書物を持ってくる少しの間に逃走していた。
 
「……どうしたものですかね」
 
今日もまたハクオロに逃げられ、早くも何度目か分からない溜息をつくベナウィであった。
 
「いったいどうしたら聖上に真面目に政務をさせる事が出来るのでしょう。聖上に不快感を与えず、なおかつ逃げられないように出来る人でもいれば……!」
 
そこまで言った時、ベナウィの頭に一人の女性が浮かんできた。「何故もっと早く気がつかなかったのでしょう。これで聖上の問題も解決できますね」そう言ってベナウィは、早速行動に移ったのであった。
 
「聖上、今日は兵の状態を見てくれとクロウに言われているので席を外したいのですが、宜しいですか?」 
 
珍しくべナウィが自分から席を外すと言ってきた。
 
「ああ構わないぞ」
 
私はすぐに承知した。ベナウィさえ居なければ、政務を置いて逃げ出す事など簡単だからだ。だが、ベナウィの話はそれで終わりでは無かった。
 
「それと、私がいない間はユズハ殿に聖上の傍に居てもらいます」
 
「ユズハが?ちょっと待てベナウィ、何でそこでユズハが出てくるんだ?」
 
ベナウィの予期せぬ言葉に、私は驚いて聞き返した。するとベナウィは「私がいない間も聖上が安心して政務をして下さるために、僭越ながらユズハ殿に聖上の力になってくれと頼みました」と言ってきた。ベナウィの奴、何を考えているんだ?しかし、ユズハならお昼寝の時間まで待てば抜け出すことも……。
 
「聖上、ユズハ殿をお連れしました」
 
そんな事を考えていたらベナウィがユズハを連れてきた。
 
「ハクオロ様、今日からよろしくお願いします」
 
ユズハが挨拶をしてきた。
 
「ああ、よろしく。」
 
私もユズハに挨拶をして頭を軽くなでた。頭をなでた時のユズハの気持よさそうな顔が、私は大好きだった。
 
「それと聖上、左手を出していただけませんか?」
 
ユズハの頭をなでていたら、ベナウィがそんな事を言ってきた。
 
「左手を?構わないがいったい何を……」
 
私の言葉を遮るかのように、ガチャンという重々しい音が聞こえてきた。音の出所を見ると、私の左手には丈夫そうな手鎖が付けられていた。
 
「な? べナウィ、これはいったい……」
「ユズハ殿は右手を」
 
私の質問が聞こえないかのように、ベナウィは今度はユズハの右手に私のしている手鎖の反対側をはめた。これにより、一つの手鎖に私とユズハが結び付けられた。
 
「べナウィ、私とユズハに手鎖とはどういうつもりだ」
 
私はわけが分からなくて、ベナウィに問い詰めた。
 
「聖上が集中して政務に取り掛かれるようにするためです」
 
……要するに私が逃げ出せないようにするためか。
 
「それでは聖上、ユズハ殿、私はこの辺で失礼させていただきます」
 
そう言って、ベナウィは書斎から出て行ってしまった。
 
「さて、どうしたものか」
 
今書斎に居るのは私とユズハの二人だけだ。ベナウィも行ってしまったので、ここを抜け出すのは簡単だ。だが、今私はユズハと鎖で繋がれているので、迂闊に城の外にも出られない。
 
「あの、ハクオロ様……」
 
どうやって抜け出そうか考えているうちに、ユズハが話しかけてきた。
 
「ん? なんだいユズハ?」
 
「ユズハは、ハクオロ様の迷惑になっていないのでしょうか?」
 
「そんな事はないぞ。ユズハが傍に居てくれるだけで、私には十分嬉しいのだから」
 
どうやら、私が何時までたっても書類に目を通そうとしないのでユズハは自分のせいだと思ったらしい。……ここは大人しく、真面目に書類に目を通すか。
何故だろう? あれからずっと書類を片付けているのに、いつもより疲れない。書類の量が普段より少ない気がする。今日はベナウィの代わりにユズハが傍に居るからだろうか?
 
「ユズッち〜」
 
そんな事を考えていたら、アルルゥとカミュがやってきた。ユズハを探しに着たのか?
 
「ん、ベナウィに聞いた。ユズッち、おと〜さんと一緒に頑張ってるって。だから応援しに来た」
 
なるほどユズハを応援しに来たのか。
 
「ありがとう。アルちゃん、カミュち」
 
ユズハも嬉しそうだ。二人はしばらく留まっていたが、「姫さま〜勉強の時間ですぞ〜」というムントの声がしたので、
 
「やばっ、このままじゃ見つかっちゃう。それじゃあ おじ様、ユズッち、またね」
「ん、バイバイ」
と言って去っていった。
 
「ユズハ、兄者と上手くやっているか?」
 
それからしばらくして、オボロがやって来た。
 
「お兄様?」突然のオボロの来訪にユズハも驚いていた。
 
「オボロか。いったいどうした?」
 
いつもなら兵の訓練や、ベナウィやカルラと再戦をしている為余りこの部屋を訪れないオボロが来たので、私も驚いた。
 
「いや、兄者がユズハと一緒に政務をやっているって言うからユズハは上手くやっているかと思ってな」
 
 なるほど、ユズハの事が気になってきたのか……オボロらしい。
 
「それにしても兄者、その鎖は何だ?」
 
オボロが私とユズハを繋いでいる鎖について尋ねてきた。……むしろこっちが聞きたいくらいだ。
 
「ユズハと仲良く政務が出来るようにだとさ。まったく、ベナウィの奴いったい何を考えているんだ?」
 
ふと、オボロを見ると何故かニヤニヤしている。
 
「なんだ、オボロ?何がおかしい」
 
「いや、いつもなら兄者は余り楽しそうに政務をやってる様に見えるんだが、今日は結構楽しそうだなって思ってな」
 
……そういえば確かにそうだ。いつもなら嫌々やっている政務が、何故か余り嫌じゃない。それどころか、少し楽しいような気さえしてくる。ふと横を見ると、書類が山のように置かれている。その山が、決していつもより量が少ないわけでは無いと物語っている。
 
「兄者 これからもユズハの事、頼むぞ」
 
いきなりの事だったが、私にそう頼んだオボロの眼には決意が宿っていた。
 
私はそんなオボロに「ああ、任せておけ。何があっても私がユズハを幸せにしてみせる」そう答えていた。
 
「ありがとう兄者、本当にありがとう」
 
そう言うと、オボロは泣きながら礼を言った。
 
「これでユズハも……」
 
そんな事を言いながら、オボロは部屋を出て行った。私はこの時、オボロの決意が私の想像していた事と違うことに、気づいていなかった。
 
「ふぅ、やっと一息ついた。さすがに……疲れた。ユズハ、大丈夫か?……ユズハ?」
 
「……ハクオロ様?」
 
心なしか眼が虚ろだ。いつの間にか、お昼寝の時間になっていたらしい。
 
「ユズハ、大丈夫か?」
 
「少し、疲れました」
 
そう言ったユズハは。今にも眠りそうだった。このまま此処で寝たら風邪を引いてしまう……そうだ!
 
「あの、ハクオロ様?」
 
私はユズハの頭を膝の上に乗せた。膝枕というやつだ。
 
「ユズハはもう休む時間だ。私はもう少し頑張っているから、ユズハは少し休んでいなさい」
 
「でも……それではハクオロ様が」
 
本当にユズハは優しい子だ。だが、そんなユズハを私はとても愛おしく思った。
 
「いいから、ユズハはもうお休み」
 
「はい、それではお言葉に甘えて……」
 
それからしばらくして、ユズハの寝息が聞こえてきた。
 
「さて、もう少し頑張るかな」
 
ユズハの温もりを感じながら、私は再び書類を片付けにかかった。
 
「ハクオロさーんご飯ですよ〜」
 
政務が終ったのは夕食の時間になった時だった。
 
「ハクオロ様、もう夕食の様です」
 
「もうそんな時間か。行こう、ユズハ」
 
「はい」
 
短いやり取りの後、私とユズハは食堂に行った。
 
「聖上、政務の方は終わりましたか?」
 
ベナウィがいつもの様にハクオロに尋ねた。
 
「ああ、もう終わったぞ」
 
その瞬間、ざわめきが走った。
 
「聖上、本当ですか?」
 
ベナウィが驚いていた。ベナウィが驚くのも無理はない。ハクオロがこの時間に政務を終えていることなど、ありえないからだ。
 
「今日はユズハのお陰で調子が良くてな」
 
そう言ってユズハのほうを見る。
 
「そんな・・・ユズハは何もしていません。」
 
「いや、ユズハが居なかったら私はまだ政務をしていただろう。ありがとう、ユズハ」
 
自然とそんな言葉が出た。その時、ユズハがほとんど何も食べていないことに気がついた。
 
「どうしたユズハ。余り食欲がないのか?」
 
「いえ右手が使えないので、料理が取れないのです」
 
そうか、ユズハは私と違い右手が繋がれているから上手く食べれないのか。それならば、「ユズハ、あ〜んしてくれないか」
 
え? ユズハには言葉の意味がわからなかったらしい。
 
「だから、あ〜んしてくれないか」
 
「ハクオロ様、あ〜んとは何なのですか?」
 
「簡単に言うとだな、ユズハは今右手が使えないだろう、だから代わりに私がユズハに料理を食べさせる。その為に、ユズハは、あ〜んと言ったら口を開けてくれなければいけないんだ」
 
「あ〜ん」の説明をしている間に、食卓に不穏な空気が流れていることにハクオロは気づいていなかった。
 
「それでは……あ〜ん」
 
ユズハが遠慮がちに口を開けるのを見て、私はユズハの口に料理を運んだ。
 
「どうだ?」
 
「はい、とってもおいしいです」
 
その後もユズハの口に料理を運んでいく。
 
「あの、ハクオロ様、ハクオロ様は食べないのですか?」
 
そういえば、ユズハにあげる事に集中して自分が食べるのを忘れていた。
 
「そういえばそうだな。それじゃあ、何か食べるものは……」
 
そんな事を言いながら、どれにしようか悩んでいると「ハクオロ様」
 
「ん?どうした、ユズハ」
 
「あ〜ん……してください」
 
なに?
 
「今度はユズハが、ハクオロ様に食べさせたいのですが」
 
ユズハが私に?
 
「あの……だめなのでしょうか?」
 
「そんなことはないぞ。それじゃあ、お願いするかな」
 
ユズハが私の為に……そう考えた時、私は何だかとても嬉しかった。ユズハが傍に居ると心が休まる。ユズハがオボロやクロウ達と楽しそうに話していると、私の心は揺らぐ……そうか、やはり私はユズハを……まったく、自分のことなのに分からないものだな。
 
「聖上」
 
自分のユズハに対する想いに気づいた時、ベナウィが「一刻も早くユズハ殿と一緒に、ここからお逃げください」と言ってきた。
 
「……は?」
 
言葉の意味が分かるのに、そう時間はかからなかった。ベキッ エルルゥが箸を握りつぶした音がした。
 
「いくらユズハちゃんでも、ハクオロさんに「あ〜ん」だけは……絶対にさせないんだから―――」
 
…エルルゥ?
 
「ハクオロさんの、ハクオロさんの「あ〜ん」は私のものなんだから―」
 
なにやら意味の分からない事を言いながら、エルルゥがユズハめがけて迫ってきた。その顔は、まるで噂に聞く街道の禍日神、ヲイデゲエのようだ。確かに、今すぐ逃げたほうが良さそうだ。「ユズハ、逃げるぞ」「え?」私はユズハの手を握り、一目散に出口へと向かった。
 
「逃がさないんだから〜」
 
エルルゥが襲い掛かってきた。
 
「兄者とユズハには、指一本触れさせん。さあ兄者、今のうちに」
 
「すまん、オボロ」
 
私とユズハは、何とかエルルゥから逃げ出す事に成功した。
 
「邪魔ァ」
 
ドカッ 
 
「ゲフッ」
 
「あぁ、若様!」
 
……オボロの犠牲によって……
 
 
 
 
 
 
「ここまで来れば、もう大丈夫だろう」
 
私達は食堂からかなり離れた自分の部屋、つまり禁裏に来ていた。しかし、これからどうしよう。あんな事になった後だし、風呂にも入れん。今日はもう寝るか。
 
「あの、ハクオロ様……ここは何処なのですか?ユズハは、ここで何をすれば良いのでしょう?」
 
ユズハにそう言われて、私はユズハを禁裏に連れてきてしまった事に気づいた。そうか、今日はユズハが一緒だったんだ。
 
「ああ、ここは私の部屋だ」
 
「ハクオロ様のお部屋?」
 
「ああ、今日はもう寝ようかと思ってな。だがその前に、ベナウィを探してこの手鎖を外してもらわないとな」
 
「そう……ですか」私がそう言うと、何故かユズハは寂しそうだった。
 
「どうしたユズハ?」
 
「ハクオロ様……ユズハは、わがままな子です」
 
「ユズハ?」
 
「今日は、ずっとハクオロ様の傍に居たのに、ユズハはもっとハクオロ様の傍に居たいと思ってしまうのです。やっぱり、ユズハはいけない子です」
 
「ユズハ……」
 
ユズハは、こんなにも私のことを想っていてくれたのか。……もう少し自分に素直になるかな。ユズハの気持に……そして自分の気持に答えるため、私はユズハを抱きしめた。「あっ」ユズハから可愛らしい声が聞こえた。
 
「ハクオロ様?」
 
「ユズハ、私はユズハがわがままだ何て思った事はないぞ。それどころか、ユズハが私にわがままを言ってくれる事が、私はとても嬉しかった。なぜなら、私がユズハを好きだからだ」
 
「ハクオロ様……」
 
「それだけでは、だめかい?」
 
ユズハが首を振った。
 
「ハクオロ様……本当にユズハで良いのですか?ユズハよりも他の人の方が……」
 
ユズハの言葉はそこで途切れた。私がユズハの口をふさいだからだ。それから暫くの間その状態が続いた。私からその状態を解いた。
 
「たとえ私が持っている全てのものと換えても、ユズハの代わりなんてないんだ。ユズハ、これからも私を支えてくれないか?私の無事を祈ってくれないか?」
 
「……はい」
 
会話が終わると同時に、私は再びユズハの口を占領した。さっきとは違い、今度は互いの舌を絡みつかせる。ユズハが求めてくると、私はそれを巧みにかわす。代わりに、ユズハの髪を撫で、腰に手を回し、ユズハに快楽を与える。
 
ユズハの眼に、戸惑いと快楽の色が宿る。私が口を離そうとすると、ユズハがそれを捉えて離さず、ユズハが離そうとすると、私が求めて離さない。私達は何ともいえない熱気に満ちた空間で、互いを求め合っていた。やがて、どちらともなく口を離した。互いの息がかかる距離、ユズハを見ると、息が荒く、頬を上気させ、その瞳は虚ろでとろけている。
 
「はく…おろ…さまぁ…」
 
しかし、体の火照りは今にも身を焦がしそうなほど熱い。
 
「ハクオロ様…来て……ください……」
 
ユズハが私を求めてくる。私もユズハを求めている。
 
「ユズハ……いくぞ!」
 
「はい……」
 
月が輝く禁裏の中で、再び互いの唇を重ね合わせながら、私とユズハは一つになった。
 
 
 
 
 
 
「上手くいきましたね」
 
ハクオロとユズハの会話を聞いていたベナウィが、オボロに言った。
 
「ああ、兄者はあれで結構鈍感だからな。これでユズハも幸せになれる」
 
「そうですね。これでわが国も安泰でしょう」
 
そう言って微笑むベナウィに、「それにしてもベナウィ、お前いつから兄者がユズハのことが好きだと気づいてたんだ?」と、オボロが不思議そうに訊ねた。
 
「簡単な事ですよ。聖上はユズハ殿と居る時が、一番優しい眼をしているのですから。それに……」
 
「それに?」
 
 
 
 
 
「ユズハ殿と会った後の聖上は、やる気が違いましたから」
 
 
 
 
 
 
 
どうも俊です^^
よく分からない作品になってしまいましたw
ユズハクですw書いていてとても難しかったのですが、同時にとても楽しかったです^^書けば書くほどたかや様やセシリア様の凄さが分かります。もっとがんばらなくてはw 
今回はセシリア様の「イヤイライケレ」を参考にして、練り直して見ました^^如何でしょうか?
 
こんなところですw それでは^^